WPH(加水分解ホエイ)プロテインとは?最速吸収の効果と注意点を解説
「WPCやWPIは試したけど、もっと吸収が速いプロテインはないの?」——そんな疑問に応えるのがWPH(Whey Protein Hydrolysate=加水分解ホエイプロテイン)です。酵素でタンパク質をペプチドまで事前分解した「最速吸収」のホエイプロテインで、WPC・WPIでは物足りない吸収スピードを求める競技者や、トレーニング直後に胃がもたれやすい方に選ばれています。
ただし正直に言えば、WPHは万人向けではありません。価格はWPCの2〜3倍、苦味が出やすく、WPIとの筋肥大の差も研究では明確になっていません。本記事では学術論文と筆者自身の実飲経験をもとに、WPHの本当の価値と「買うべき人・買わなくていい人」をはっきりお伝えします。
※「WPHの前に、プロテインの種類の全体像をおさらいしたい」という方は、先に プロテインの種類とは?ホエイ・ソイなど全7種類の特徴をわかりやすく解説 をご覧ください。WPCとWPIの違いは WPIとWPCの違いを徹底比較|成分・乳糖・価格で見る最適な選択 で解説しています。
WPH(加水分解ホエイ)プロテインとは?基本を押さえよう
WPHの製法と仕組み
WPH(Whey Protein Hydrolysate)は、ホエイプロテインを酵素処理によって加水分解し、タンパク質をより小さなペプチド(アミノ酸が数個つながった断片)に分解した製品です。Manninen(2009)のレビューによると、加水分解ホエイプロテインは消化の初期段階を事前に済ませた状態であり、胃腸での消化負荷が軽減され、アミノ酸の血中への出現が速まるとされています。
通常のホエイプロテイン(WPC・WPI)は完全なタンパク質の形で摂取され、体内で消化酵素によって分解されてからアミノ酸として吸収されます。WPHはこの消化プロセスの一部を製造段階で完了しているため、「プレダイジェスト(事前消化済み)」とも呼ばれます。
加水分解度(DH)とは
WPHの品質を示す指標のひとつが「加水分解度(DH:Degree of Hydrolysis)」です。DHが高いほどペプチドが短く分解されており、吸収が速くなります。市販品のDHは製品によって異なり、一般的に8〜30%程度の範囲で、DH20%以上の製品は消化吸収がとくに速いとされています。Calbet and Holst(2004)の研究では、加水分解度の高いプロテインほど胃排出が速く、血中アミノ酸の上昇も早いことが報告されています。
WPHの基本的な栄養プロファイル
WPHのタンパク質含有率は製品により80〜95%と幅がありますが、多くは90%前後です。WPIをベースに加水分解したものはタンパク質純度が高く乳糖もほぼ含みません。WPCベースのWPHは純度がやや下がる代わりに価格が抑えられる傾向があります。
WPC・WPI・WPHの違いを徹底比較
ホエイプロテインの3種類は、同じ牛乳由来でも製法と特徴が大きく異なります。Hulmiら(2010)の研究では、ホエイプロテインの異なる形態(濃縮・分離・加水分解)が運動後の筋タンパク質合成や血中アミノ酸動態に与える影響が比較されています。
| 項目 | WPC(濃縮) | WPI(分離) | WPH(加水分解) |
|---|---|---|---|
| 製法 | 濾過による濃縮 | 高精度の分離精製 | 酵素による加水分解 |
| タンパク質含有率 | 70-80% | 90-95% | 80-95% |
| 吸収速度 | 速い(1-2時間) | 非常に速い(30-60分) | 最速(15-30分) |
| 乳糖 | 含む(5-10%) | ほぼなし(1%未満) | 製品による(WPIベースならほぼなし) |
| 味 | まろやか | 淡白 | 苦味が出やすい |
| 価格 | 安い | 高い | 非常に高い |
| 向いている人 | 初心者・コスパ重視 | 減量期・乳糖不耐症 | 競技者・最速回復重視 |
吸収速度の違い
WPHの最大の特徴は吸収速度です。Calbet and Holst(2004)の研究では、加水分解度の高いプロテインほど胃排出が速く、血中アミノ酸の上昇も早いことが報告されています。ペプチドの状態で消化管に到達するため、消化にかかる時間が短縮されることがその理由です。
筋タンパク質合成への影響
Moroら(2019)の二重盲検クロスオーバーRCTでは、若年男性にWPHとintact whey(非加水分解ホエイ)を摂取させた結果、摂取1時間後の筋タンパク質合成(MPS)は両群とも約43%増加し有意差がありませんでした。ただし3時間後の時点ではWPH群のみ合成が持続しており、時間依存的な優位性が示唆されています。
一方、Tangら(2009)のRCTでは、レジスタンス運動後にWPH・カゼイン・ソイを比較した結果、運動後のMPSはWPHがカゼインの約2.2倍、ソイの約1.3倍と有意に高いことが報告されています。ただしこの研究は各群n=6と非常に小規模であり、結果の解釈には注意が必要です。
またCastroら(2019)の8件のRCTを対象としたメタアナリシスでは、WPC・WPI・WPHのいずれも除脂肪体重(FFM)への有意な効果は認められず、WPH含有の研究が1件のみで比較が困難であったと報告されています。総合すると、WPHは短期的なMPS応答では有利な面があるものの、長期的な筋肥大においてWPIとの明確な差は現時点では証明されていません。
価格と入手しやすさ
WPHは製造工程が複雑なため、WPC(1kgあたり3,000〜5,000円程度)やWPI(1kgあたり5,000〜8,000円程度)と比較して、1kgあたり8,000〜15,000円以上と高価格帯に位置します。国内ではWPC・WPIほど商品数が多くなく、海外ブランド(Optimum Nutrition、Dymatize、Gaboricなど)からの購入が主な入手経路です。iHerbやAmazonの並行輸入品で探すことになるケースがほとんどです。
WPHプロテインのメリット・効果
吸収速度がホエイプロテインのなかで最速
事前に消化済みのペプチド状態で摂取するため、胃腸での消化プロセスが短縮されます。トレーニング直後の「ゴールデンタイム」に最速でアミノ酸を届けたい競技者にとって、WPHは理論上最も合理的な選択肢です。
胃腸への負担が少ない
消化の初期段階が完了しているため、胃腸の弱い方やトレーニング直後の胃が受け付けにくいタイミングでも比較的飲みやすいとされています。Manninen(2009)のレビューでも、加水分解ホエイは消化管への負荷が軽い点が指摘されています。
インスリン応答への影響
Powerら(2009)の研究では、45gのWPHとWPIを摂取した場合のインスリン応答を比較しています。この研究ではWPHのインスリンピークがWPIより28%低く、ピーク到達も遅いという結果が報告されました。ただし、インスリン応答のパターンは加水分解度や摂取量によって異なり、Calbet and Holst(2004)の研究ではペプチド加水分解物でインスリン応答が高まるケースも報告されています。加水分解ホエイのインスリン応答についてはまだ一貫した結論が出ておらず、製品の加水分解度や条件によって結果が変わる可能性がある点は理解しておく必要があります。
WPHプロテインのデメリット・注意点
価格が非常に高い
前述の通り1kgあたり8,000〜15,000円以上と、WPCの2〜3倍のコストがかかります。毎日飲むとなると月1万円以上の出費も珍しくなく、費用対効果の面では一般的なトレーニーにはWPCやWPIで十分な場合がほとんどです。
苦味が出やすい
タンパク質を加水分解すると、ペプチドの構造変化により苦味(ビターペプチド)が生じます。加水分解度が高いほど苦味が強くなる傾向があり、フレーバーなしのWPHは飲みにくいと感じる方が多いです。チョコレートやコーヒー系のフレーバーで苦味をマスキングした商品を選ぶと飲みやすくなります。
筋肥大効果でWPIとの明確な差が証明されていない
吸収速度ではWPHが優位ですが、Moroら(2019)のRCTではMPSの絶対量にWPHとintact wheyで差がなく、Castroら(2019)のメタアナリシスでもWPH特有の筋肥大効果は確認されていません。「最速の吸収」が「最大の筋肥大」を保証するわけではないことを理解しておく必要があります。
国内での商品数が限られる
WPC・WPIと比較すると国内メーカーの取り扱いは少なく、海外通販やiHerbなどでの購入が中心になります。
WPHプロテインが向いている人
- 競技レベルのアスリートで、トレーニング直後の回復速度を1秒でも速めたい方
- トレーニング直後に胃が受け付けにくく、消化負担の少ないプロテインを探している方
- WPCやWPIでお腹の不調がある方(消化負荷の軽減を期待)
- コストよりもパフォーマンスを最優先する方
正直に言うと、WPHは万人向けではありません。私も海外製のWPH(チョコ味)を1袋試しました。飲んだ直後の「お腹に溜まらない感じ」はWPIより明らかに軽く、トレーニング直後でもスッと入っていく感覚はありました。ただ、プレーン味は苦味がかなり強くて正直飲めなかったです。翌日の筋肉痛や回復感でWPIとの差は正直わかりませんでした。月のプロテイン代が1.5倍以上になることを考えると、一般的なトレーニーにはWPIで十分です。
WPHプロテインを選ぶなら確認すべき3つのポイント
WPHは製品ごとの品質差が大きいため、購入前に以下を確認しましょう。
① 加水分解度(DH)を確認する
DH(Degree of Hydrolysis)が表示されている製品を選びましょう。DH15〜25%程度がバランスの良い範囲で、吸収の速さと苦味のトレードオフが取れています。DHが高すぎると苦味が強く、低すぎるとWPIと大差がなくなります。表示がない製品は避けた方が無難です。
② ベースがWPCかWPIかを確認する
WPHには「WPCを加水分解したもの」と「WPIを加水分解したもの」があります。乳糖が気になる方はWPIベースを選んでください。成分表示の原材料欄で「ホエイプロテインアイソレート(加水分解)」と記載があればWPIベースです。
③ フレーバー付きを選ぶ
WPHはプレーン(ノンフレーバー)だと苦味が目立ちます。初めての方はチョコレートやコーヒー系など、苦味をマスキングしやすい濃いフレーバーの製品を選ぶのがおすすめです。
WPHプロテインの飲み方と摂取タイミング
最も効果的なタイミング:トレーニング直後
WPHの最大の強みである吸収速度を活かすなら、トレーニング直後の摂取が最も合理的です。20〜30gのタンパク質量を目安に、水で溶かしてすぐに摂取しましょう。Calbet and Holst(2004)の研究で示されているように、ペプチド加水分解物は胃排出が速いため、トレーニング直後でも胃もたれしにくく速やかにアミノ酸が血中に届きます。
トレーニング直前の摂取
消化が速いため、トレーニング15〜30分前に摂取しても胃もたれしにくい種類です。トレーニング中の血中アミノ酸レベルを高めておきたい場合に適しています。
他の種類との使い分け
WPHはコストが高いため、すべてのタイミングで使う必要はありません。トレーニング直後はWPH、朝食や間食はWPC/WPI、就寝前はカゼインやソイというように、目的に応じた使い分けがコスパの面でもおすすめです。プロテインを飲むタイミング全般は プロテインはいつ飲むのが効果的?【目的別】最適なタイミング完全ガイド で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q: WPHとWPIの違いを一言で言うと?
WPIは「高純度に精製したホエイ」、WPHは「酵素で事前消化したホエイ」です。吸収速度はWPHが上ですが、筋肥大への長期的な差は明確ではありません。詳しい比較は WPIとWPCの違いを徹底比較|成分・乳糖・価格で見る最適な選択 でも解説しています。
Q: WPHは乳糖不耐症でも飲めますか?
WPIベースのWPHであれば乳糖はほぼ含まれません。ただし製品によるため、原材料表示で確認してください。乳糖不耐症向けのプロテイン選びは 乳糖不耐症でもプロテインは飲める?選び方とおすすめ で解説しています。
Q: WPHの苦味を抑えるには?
チョコレートやコーヒー系など濃いフレーバーの製品を選ぶのが最も手軽です。プレーンの場合は、ココアパウダーやはちみつを加えて飲む方法もあります。
Q: 初心者にWPHは必要ですか?
一般的には不要です。初心者にはまずWPCから始めることをおすすめします。WPCで問題がなければWPI、それでも吸収速度を追求したい場合にWPHを検討する順序が合理的です。プロテインの選び方の流れは プロテインの選び方|目的・体質・種類で迷わず選ぶ5ステップ で解説しています。
【次に読むべきおすすめ記事】
WPHの特徴を押さえたら、WPC/WPIとの比較やプロテインの種類の全体像もあわせてチェックすると、自分に合った製法が見つかります。
- プロテインの種類の全体像を知りたい方は → プロテインの種類とは?ホエイ・ソイなど全7種類の特徴をわかりやすく解説
- WPIとWPCの違いを知りたい方は → WPIとWPCの違いを徹底比較|成分・乳糖・価格で見る最適な選択
- いつ飲むのが効果的か知りたい方は → プロテインはいつ飲むのが効果的?【目的別】最適なタイミング完全ガイド
- 目的別のおすすめ製品を知りたい方は → おすすめのプロテイン完全ガイド|目的別・悩み別で正しく選ぶ
参考文献
-
Manninen AH. Protein hydrolysates in sports nutrition. Nutr Metab (Lond). 2009;6:38.
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Calbet JA, Holst JJ. Gastric emptying, gastric secretion and enterogastrone response after administration of milk proteins or their peptide hydrolysates in humans. Eur J Nutr. 2004;43(3):127-139.
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Power O, Hallihan A, Jakeman P. Human insulinotropic response to oral ingestion of native and hydrolysed whey protein. Amino Acids. 2009;37(2):333-339.
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Hulmi JJ, Lockwood CM, Stout JR. Effect of protein/essential amino acids and resistance training on skeletal muscle hypertrophy: a case for whey protein. Nutr Metab (Lond). 2010;7:51.
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Castro LHA, de Araújo FHS, Olimpio MYM, et al. Comparative Meta-Analysis of the Effect of Concentrated, Hydrolyzed, and Isolated Whey Protein Supplementation on Body Composition of Physical Activity Practitioners. Nutrients. 2019;11(9):2047.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6769754/
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この記事を書いた人
フィット
- 2014年7月 筋トレスタート(歴10年)
- 2018年5月 パーソナルトレーナースタート(歴7年)
- 2019年6月 社内で最速級の速さで店長へ就任
- 2020年4月フリーランスパーソナルトレーナーとして独立
- 2022年7月 株式会社FITONLINE設立
- 2026年2月 FitOnlineで試飲したプロテイン18ブランド・159フレーバー
- パーソナルトレーナーとして最高月収150万円達成
- 実際に飲んで試してきたプロテインの種類50種類以上、サプリメント30種以上
- ANYTIME、JOYFIT、FASTGYM、ゴールドジム、FIT PLACE、東急スポーツオアシスなど計10以上の大手ジム利用経験あり
- 通算1,000名以上のお客様へカウンセリング・セッション
- お客様の最高減量幅34kg
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