HMBは高齢者の筋肉に効く?寝たきり・サルコペニア対策を研究で解説

HMBは高齢者の筋肉に効く?寝たきり・サルコペニア対策を研究で解説

「親が急に痩せてきた」「入院中に筋肉が落ちないか心配」「施設で勧められたけど本当に効くの?」高齢のご家族をめぐる相談で最も多い3つの疑問です。

じつはHMBは、筋肉が減りつつある高齢者ほど効きやすいサプリです。ただし「効く3条件」と「効かない2条件」がはっきり分かれています。

指導歴8年、介護中のご家族やご高齢のクライアントから数えきれないほど受けてきたテーマです。12件のヒト対象研究と現場で見てきた景色を合わせて整理します。

※本記事は学術研究の紹介を目的としたもので、医療行為や治療を推奨するものではありません。療養中・入院中のご家族への使用、持病のある方、服薬中の方、嚥下(飲み込み)が弱っている方は、必ず医師・管理栄養士にご相談のうえご判断ください。

効果・飲み方・副作用・選び方など、HMBの全体像を先につかみたい方は HMBとは?効果の条件と選び方を最新エビデンスと現場視点で総まとめ【保存版】 にまとめています。

HMBとは?効果の条件と選び方を最新エビデンスと現場視点で総まとめ【保存版】

HMBとは?効果の条件と選び方を最新エビデンスと現場視点で総まとめ【保存版】

結論|高齢者にHMBが「効く3条件」と「効かない2条件」【早見表】

最初に全体像を早見表で示します。HMBは高齢者の中でも「効きやすい人」と「効きにくい人」がはっきり分かれます。ご家族の状態がどちらに近いかを、まずここで判定してみてください。

HMBが効きやすい3条件

  • 寝たきり・手術入院・ギプス固定などで動けない期間がある:10日間の完全寝たきりで起きる筋肉減少をほぼ完全に食い止めたデータがあります(Deutz 2013)
  • 低栄養で入院している65歳以上:HMBを含む栄養補助食品で90日後の死亡率が偽薬の約半分に減ったデータがあります(Deutz 2016 NOURISH試験)
  • サルコペニア(加齢で筋肉が減る状態)と診断された方が筋トレと併用する:握力・歩行速度・椅子立ち座りが改善した比較試験があります(Yang 2023)

HMBが効きにくい2条件

  • 食事もプロテインも十分に摂れている健康な高齢者:筋肉の減少が進行していない段階では、追加で飲んでも変化を実感しにくい傾向があります(Osuka 2021では運動のみ効果的)
  • 運動もせず飲むだけ:HMBは筋トレや離床(ベッドから起き上がる)と組み合わせたときに効果が最大になります。飲むだけで筋肉が増えた研究はありません

つまりHMBは「筋肉を失いつつある高齢者」を守る方向に強く働くサプリです。まだ健康で動けているご家族に「予防」として勧めるより、入院・療養・サルコペニア診断といった「筋肉が減っている・これから減る局面」で使うほうが費用対効果が高いと言えます。

サルコペニアとは|AWGS 2019の診断基準を家族で測る方法

「サルコペニア」という言葉を初めて聞くご家族も多いので、ここで簡単に整理します。サルコペニアは加齢にともなって筋肉の量と力が減り、歩く・立つといった日常動作が難しくなる状態のことです。病気というより、老化の延長線上にある身体機能の低下、と理解するのがわかりやすいです。

AWGS 2019とは何か

アジア人向けのサルコペニア診断基準として最も広く使われているのが、アジアサルコペニアワーキンググループが2019年に発表した「AWGS 2019」です。65歳以上の方で以下のどれかに該当する場合、医療機関でのくわしい評価が推奨されています。

  • 握力が低下:男性28kg未満、女性18kg未満が目安
  • 歩く速度が遅い:6メートルを歩いて1秒あたり1メートル未満
  • 椅子からの立ち座りに時間がかかる:5回立ち座りに12秒以上

家族で「ざっくり」チェックする方法

正式な診断は医療機関が必要ですが、ご家族内でのざっくりチェックなら家でもできます。たとえば横断歩道を青信号のうちに渡りきれるか(歩行速度のおおよその目安)、ペットボトルのふたが開けにくくなっていないか(握力低下のサイン)、椅子から立ち上がるときに手で押さえないと立てないか(下肢筋力低下のサイン)などです。これらのサインが複数見られるなら、一度かかりつけ医に相談してみる価値があります。

サルコペニアは進行すると転倒・骨折・寝たきりへとつながりやすいため、早い段階で気づいて栄養と運動で手当てすることが何より重要です。HMBは、この「栄養での手当て」の選択肢の一つとして、後述する研究データで裏付けられつつあります。

なぜHMBは高齢者で効きやすいのか|分解ブレーキの役割が際立つ理由

HMBが若年者よりも高齢者で効果が出やすいのには、体の中での働き方に理由があります。結論から言うと、高齢者の体では「筋肉を作る力」より「筋肉を壊す力」のほうが目立ちやすく、HMBはその分解にブレーキをかけるのが得意だからです。

加齢で起きるのは「合成の鈍化」と「分解の加速」

若い人の体では、食事やトレーニングをきっかけに筋肉を作る反応がしっかり立ち上がります。ところが年齢を重ねると、同じ食事量・運動量でも合成の反応が鈍くなることが知られています。さらに寝たきりや入院といった動けない期間が重なると、今度は筋肉を壊すほうの反応が加速して、筋肉はどんどん痩せていきます。

HMBが担うのは「分解ブレーキ」の仕事

HMBには筋タンパクの合成を少し後押しする働きと、分解を抑える働きの2つがあります。若いトレーニング熟練者では「合成の後押し」があまり響きませんが、高齢者は「分解のブレーキ」が最も必要な局面に居るため、同じHMBでも効果の見え方が大きく変わってきます。筋肉を失いつつある人ほどHMBの恩恵を受けやすい、という研究データの一貫した傾向は、このしくみで説明がつきます。

寝たきり・入院期の筋量保持|10日で2kg減る筋肉を守れるか(Deutz 2013)

高齢者向けHMBでもっとも印象的な研究の一つが、健康な高齢者に意図的に「完全寝たきり」を経験させてHMBの効果を見た比較試験(Deutz 2013)です。ご家族が手術や骨折で入院する場面を想定すると、非常に切実なデータです。

寝たきり10日で筋肉はどれくらい減る?

60〜76歳の健康な高齢者19名(評価対象)に、10日間の完全寝たきり状態を経験してもらった比較試験(Deutz 2013)では、偽薬を飲んでいたグループで除脂肪量(脂肪を除いた体重、ほぼ筋肉量と水分)が約2.05kg減少しました。たった10日寝ているだけで2kg分の筋肉が溶けていく、という数字です。

日常生活で2kgの筋肉を「増やす」には、何か月もの筋トレと食事管理が必要です。それが動けない10日で消える、というのが高齢者の身体の現実です。

HMBを飲んでいたグループはどうだった?

一方、HMBを1日3g摂取していたグループの除脂肪量の減少は、わずか0.17kgにとどまりました。偽薬群と比べて明確な差が出ており、寝たきり期間中の筋量損失をほぼ完全に食い止めた結果です。合成が立ち上がらない寝たきり期に、HMBの「分解ブレーキ」作用が強く働いた、と解釈されています。

現場での使い所|予定手術の前から飲み始める

この研究から示唆される実用的な使い方は、「動けなくなることが事前にわかっている局面」で早めに飲み始めることです。たとえば予定された関節手術、予定帝王切開、長期入院が確実な治療などでは、入院前の1〜2週間からHMBを開始し、入院中〜リハビリ期間まで継続する使い方が研究の示す傾向と整合します。

低栄養の入院高齢者で死亡率が半減したデータ|NOURISH試験

もう一つ、医療現場で注目されている大規模な比較試験が、NOURISH試験と呼ばれるDeutz 2016の研究です。こちらは「寝たきり」というより「低栄養で入院している高齢者」を対象にした、実臨床に近い研究です。

低栄養の65歳以上652名を追跡した比較試験

アメリカの病院に内科的な理由(心不全や肺炎など)で入院した、低栄養状態にある65歳以上の患者652名を対象に、HMBを含む栄養補助食品(ONS、ゼリータイプや飲料タイプの医療用補助食品)を退院後90日間続けてもらった比較試験(Deutz 2016)です。一般的な食事指導を受けた偽薬群と比較しました。

90日後の死亡率が偽薬の約半分に

結果は、90日後の死亡率がHMB群4.8%、偽薬群9.7%。相対的におよそ半減した、という大きな数字です。体重・手の握力・ビタミンD値といった栄養状態の指標も、HMB群で良好な推移を示していました。

ただし公平に書くと、この試験では「死亡+再入院」を合わせた主要な評価項目では有意差が出ませんでした。死亡率だけを取り出すと明らかな差が見えたものの、再入院まで含めると統計的に「決定的」とまでは言えない、というのが正確な読み方です。それでも低栄養高齢者の予後に栄養補助食品が影響しうるという示唆は、臨床現場に大きなインパクトを残しました。

現場での位置づけ|医師・管理栄養士に相談する前提で

入院中の高齢者にHMBを導入するかどうかは、病院の管理栄養士や主治医の判断領域です。家族が勝手に市販のHMBサプリを持ち込むのではなく、「こういう研究があるのですが、母の栄養補助にHMB入りの医療用補助食品は検討できますか?」と医療スタッフに相談するのが正しい入り口になります。多くの病院では、HMBを含む医療用栄養補助食品がすでに採用されているケースも少なくありません。

運動できる高齢者はHMB単独でも筋力が上がる|Stout 2013・Flakoll 2004

ここまでは「動けない局面」でのHMBの話でしたが、まだ運動できる・動ける高齢者でも、HMBが筋力や機能を底上げしたデータがあります。代表的な3つの研究を順に紹介します。

65歳以上で非運動期にHMBだけで筋力アップ(Stout 2013)

65歳以上の男女を対象にした24週間の比較試験(Stout 2013)では、HMBカルシウムを1回3g・1日2回(計6g/日)飲んだグループで、筋トレを組まなかった期間にも脚の筋力が約8.8%、筋質(筋肉の出力効率の指標)が約20.8%、除脂肪量が+2.2%と、偽薬群より明らかに改善しました。「動かしていないのに筋力が上がる」という、高齢者ならではの結果です。若い人ではまず起きない現象で、HMBの「分解ブレーキ」作用が普段の生活で少しずつ蓄積した結果と解釈されています。

平均76歳の女性で機能検査が17%改善(Flakoll 2004)

平均76.7歳の閉経後女性50名を対象にした12週間の比較試験(Flakoll 2004)では、HMB 2g+アルギニン5g+リジン1.5gの組み合わせを毎日摂ってもらった結果、「椅子から立ち上がって歩いて戻る」機能検査(Get-up-and-go)が偽薬より約17%速く改善しました。椅子からの立ち上がり・数メートルの歩行は、日常生活の自立に直結する動作です。これが17%速くなるのは、生活のしやすさという観点でかなり大きな変化と言えます。

1年間の長期追跡でも筋量が増加(Baier 2009)

同じ組み合わせ(HMB+アルギニン+リジン)を1年間続けてもらった比較試験(Baier 2009)では、平均76歳の男女77名で体細胞量(活動している細胞の総量)が+1.6%、除脂肪量が+1.2%と、高齢者では異例の「増加」が確認されました。通常、この年齢層は年々筋肉が減っていくほうが自然です。それを1年かけて「増やす」方向に転換できたのは、栄養補助だけでこの結果というのはかなり印象的です。

指導で見てきた中で、HMBの手応えを明確に感じてくれた高齢クライアントはほぼ全員「食事のタンパク質が少ない、プロテインが苦手で飲めない」層でした。一方、プロテインも飲めて食事も整っている70代女性に追加でHMBを勧めても、劇的な変化を感じてもらえた経験は少ないです。「食事で埋まっていない分をHMBが埋める」という位置づけが、研究データとも現場感覚とも合います。

フィット

サルコペニア診断者では握力・歩行速度が改善|Yang 2023

すでにサルコペニアと診断されている方に、HMBが役立つかどうかを直接検証した研究もあります。

サルコペニア高齢者34名で筋トレとの併用効果を検証

60歳以上でサルコペニアと診断された34名を対象に、筋トレと組み合わせてHMBを12週間飲んでもらった比較試験(Yang 2023)では、偽薬群と比べて以下の項目が明らかに改善しました。

  • 握力が約4.61kg向上:日常のペットボトルや瓶のふた開けが楽になるレベル
  • 歩行速度が約0.11m/s向上:横断歩道を青信号で渡りきれる差
  • 5回椅子立ち座りのタイムが短縮:立ち座り動作の機能改善

骨格筋量は増えていない点に注意

一方で、骨格筋量そのものには偽薬群との差が出ませんでした。「筋肉が増えたから力が出る」のではなく、「今ある筋肉をより効率よく使えるようになった」という解釈が妥当です。サルコペニア対策でHMBを使うときの目標は「筋肉量を増やす」より「機能(握力・歩く速度・立ち座り)を底上げする」ほうが現実的、というのがこの研究の示すところです。

筋トレ併用が前提|飲むだけでは足りない

Yang 2023はHMB単独ではなく、筋トレ(レジスタンストレーニング)と併用した研究です。サルコペニアの高齢者でも、椅子に座っての足上げや、軽いダンベルでの上半身運動など、本人の体力に合った範囲での運動は欠かせません。HMBはその運動効果を底上げする立ち位置、と理解してください。

【一方で】健康な高齢者・慢性疾患では効果が限定的|反対意見とその解釈

HMBは高齢者全員に効くわけではありません。肯定的な研究ばかりを並べるのはフェアではないので、ここからは「効かなかった」研究と、その解釈を整理します。

低筋量女性でHMB単独は効かなかった(Osuka 2021)

低筋量の高齢女性156名を対象にした12週間の比較試験(Osuka 2021)では、運動のみのグループでは歩行速度が0.16m/s改善した一方、HMB単独・HMBと運動の組み合わせではいずれも偽薬との差は見られなかったという結果でした。つまりこの研究では「運動が効いたのであって、HMBは効かなかった」という厳しい結論です。

ただし対象者は「低筋量」ではあるものの、日常生活は自立して送れる比較的元気な高齢女性でした。寝たきりや低栄養入院ほどの「筋肉を失いつつある局面」ではなかった点が、Deutz 2013との違いです。

メタアナリシスでは筋量・筋力ともに小さな効果

複数の研究をまとめた分析(Wu 2015、7つの比較試験・287名)では、65歳以上でHMB群の筋量が偽薬群より明らかに多く保たれました。一方、臨床集団を含む15の研究をまとめた分析(Bear 2019、2,137名)では、筋量の差はわずかで、筋力のほうが比較的明確、という結論です。

高齢者・フレイル・サルコペニアを対象にした別の分析(Oktaviana 2019)でも、効果の一貫性は中程度にとどまり、Phillips 2022の総合レビューは「歩行速度や日常動作といった身体機能の改善を支持した研究はゼロ」と厳しい評価をしています。2025年に発表された最新の分析(García-Alonso 2025、596名・10研究)でも、筋トレ+HMBで握力と機能検査の改善は確認されたものの、体組成そのものには差がありませんでした。

結論|「筋肉が減りつつある局面」以外では効きにくい

これら反対意見の研究を素直に読むと、健康で活動的な高齢者に予防的にHMBを足しても大きな変化は期待しにくい、という結論に落ち着きます。一方、寝たきり・低栄養・サルコペニア診断といった「筋肉が減っている/これから減る」条件では明らかな効果が出るので、使い所を絞るのが正解です。

介護中のご家族から「施設入所中の母にHMBを勧めていい?」と相談されたことがあります。その方の状況(食事が細くなっている、ベッド上で過ごす時間が長い)を伺うと、まさにHMBが効きやすい条件に該当していました。一方、「まだ毎日散歩している80代の父にも予防で飲ませたい」という相談は、少し事情が違います。運動できる人と寝たきりの人では、HMBの効き方は全く別の話だと説明するようにしています。

高齢者文脈以外も含めた「誰に効き、誰に効かないか」の全体像は HMBは効果なし?意味ないと言われる理由を14件の研究で検証 で14件の研究をもとに整理しています。

HMBは効果なし?意味ないと言われる理由を14件の研究で検証

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高齢者向け摂取量・選び方・嚥下困難時の工夫|1日3g

高齢者にHMBを始める場合の、実用的な飲み方と選び方を整理します。

1日3gが標準|体重によって微調整

高齢者向け研究のほとんどはHMB 3g/日で設計されています。Deutz 2013、Stout 2013、Yang 2023のいずれも3gで結果が出ており、これ以上増やす必要はありません。体重40〜50kg台のご高齢女性では2g程度から始める選択肢もあり得ますが、まずは標準の3gで十分というのが研究の示す水準です。

分けて飲むか、一度に飲むか

Stout 2013では1回3gを1日2回(計6g)と多め設計でしたが、Deutz 2013・Flakoll 2004・Yang 2023の3g設計でも明確な効果が出ています。飲み込みや胃腸への負担を考えると、1日3gを2回(朝と夕)に分けて飲むのが高齢者には無理のない形です。

嚥下(飲み込み)が弱っているときの工夫

粉末をそのまま口に入れてむせる場合は、以下の工夫が使えます。

  • ゼリー飲料タイプ:HMBを含む医療用栄養補助食品(ONS)のゼリータイプなら、錠剤やカプセルが飲みにくい方でも飲み込みやすい
  • ヨーグルトや茶わん蒸しに混ぜる:粉末タイプを少量の半固形食品に混ぜると、誤嚥(ごえん)のリスクが下がる
  • 分包タイプを選ぶ:毎食後に1包ずつ、といった形で介助者が管理しやすい
  • 病院・施設で使われている製品を参考に:管理栄養士がいる場合、どの製品なら飲み込みやすいか相談できる

嚥下が弱っている方に無理に固形や粉末を飲ませると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。形状の選択は必ず介助者・医療スタッフと相談してから決めてください。

プロテインとの優先順位

もしご家族が食事のタンパク質がしっかり摂れていて、プロテインも飲めているなら、まずはそちらで十分です。食が細くてタンパク質が不足している方、プロテインを飲めない(味が苦手・喉を通らない)方にこそ、HMBの出番があります。

体重別の分量早見表(50〜100kg)や製品表記の読み方(HMBカルシウム1500mgは実質HMB約1230mg)など、より細かい用量設計は HMBの摂取量|1日何gを何回に分ける?体重別の飲み方を早見表と論文で解説 にまとめました。

HMBの摂取量|1日何gを何回に分ける?体重別の飲み方を早見表と論文で解説

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副作用・長期安全性|1年間の追跡データから

高齢者にとって最も気になるのが、長期に飲み続けたときの安全性です。研究データから見える現時点の結論を示します。

1年間の追跡で有害事象の報告なし

平均76歳の男女77名に1年間、HMB+アルギニン+リジンを毎日飲んでもらった比較試験(Baier 2009)では、重大な有害事象や検査値の異常な変化は報告されませんでした。むしろ体細胞量と除脂肪量の改善が認められたポジティブな結果です。

さらに、健康成人・HIV陽性者・がん患者の3集団を並行して評価した臨床試験(Rathmacher 2004)でも、HMBを含む栄養補助食品で有害事象の増加は認められず、一部の血液指標はむしろ改善傾向が見られました。

ただし持病・服薬のある方は必ず主治医に

安全性データは「健康な高齢者」を中心にした結果です。糖尿病・高血圧・腎機能低下・抗凝固薬の服用といった個別事情がある場合は、研究のサンプルから外れている可能性があります。新しいサプリを始めるときは、必ずかかりつけ医・薬剤師に相談してから判断してください。

腎臓・肝臓・がん・ドーピング該当性まで含む副作用全般の詳細は HMBに副作用はある?腎臓・肝臓・がん・ドーピングの不安を13研究で検証 で13件の研究をもとに整理しています。

HMBに副作用はある?腎臓・肝臓・がん・ドーピングの不安を13研究で検証

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よくある質問

Q. 認知症の親に飲ませても大丈夫ですか?

現時点で、認知症の方に対するHMBの効果を直接評価した比較試験は見当たりません。安全性データ自体は1年間の追跡(Baier 2009)でも問題なしとされていますが、飲み込みの評価・他の服薬との相互作用の確認が欠かせません。必ず主治医に「HMBを日常の栄養補助として足しても問題ないか」を相談したうえで判断してください。

Q. 糖尿病がある家族に勧めていいですか?

HMBが血糖値を悪化させるという報告は、現時点でありません。ただし糖尿病の方は食事全体の設計(炭水化物・タンパク質のバランス)が治療の一部であり、サプリを足すことで食事管理に影響が出る可能性もあります。主治医と管理栄養士に「HMBを追加することで日々の栄養管理に影響しないか」を確認してから始めるのが安全です。

Q. 食事が細くてHMBが飲めない時はどうすれば?

粉末やカプセルが飲めない場合、ゼリー飲料タイプ・分包タイプ・ヨーグルトに混ぜるといった工夫が使えます。医療用栄養補助食品にはHMBが含まれる製品も多く、病院や施設の管理栄養士に相談すれば飲み込みやすい形状を提案してもらえます。無理に粉末を口に入れて誤嚥させるほうが、よほど大きなリスクです。

Q. 効果が出るまで何週間くらいかかりますか?

高齢者を対象にした研究の多くは12週間以上の介入で結果を測っています。Flakoll 2004は12週、Yang 2023は12週、Stout 2013は24週、Baier 2009は1年という設計です。3か月を一つの目安として、飲み始めて1〜2週で「効いていない」と判断するのは早すぎます。サルコペニア対策は年単位で続ける発想が必要です。

Q. プロテインとHMB、どちらを優先すべきですか?

ご家族の状態で変わります。食事のタンパク質が足りていて、プロテインも問題なく飲めているなら、まずはプロテインで十分です。一方、食が細い・プロテインが飲めない・寝たきり・サルコペニアと診断された方は、HMBの優先度が上がります。「プロテインで埋まっていないタンパク質の穴を、HMBが小さな形で埋める」位置づけ、と考えるのが現場感覚とも研究結果とも整合します。

Q. 入院前からHMBを飲み始めるべきですか?

予定された手術や入院が決まっている場合、入院の1〜2週間前から飲み始めるのは理にかなっています。Deutz 2013は寝たきり開始5日前から介入を始めており、入院中〜リハビリ期間も継続するのが研究の傾向と一致します。緊急入院の場合はそのタイミングは取れませんが、入院が決まってから主治医に相談して始める、という流れでも遅くはありません。

まとめ

  • HMBは高齢者全員に効くわけではない:寝たきり・低栄養入院・サルコペニア診断など「筋肉が減っている局面」で効果が際立つ
  • 寝たきり10日の筋量損失をほぼ防止:偽薬群が-2.05kgだったのに対しHMB群は-0.17kgにとどまったデータがある(Deutz 2013)
  • 低栄養入院者で90日死亡率が半減:HMB含有の医療用栄養補助食品で4.8% vs 9.7%(Deutz 2016 NOURISH試験、主要評価項目は有意差なしの点に留意)
  • サルコペニア診断者は機能が改善:握力+4.61kg、歩行速度+0.11m/s、椅子立ち座り短縮(Yang 2023、筋トレ併用)。骨格筋量は増えず
  • 動ける高齢者は筋力・機能の底上げ:Stout 2013で脚筋力+8.8%、Flakoll 2004でGet-up-and-go +17%、Baier 2009で1年間の除脂肪量増加
  • 健康で元気な高齢者には効きにくい:低筋量でも日常自立した女性ではHMB単独は効かず、運動のほうが効果的(Osuka 2021)
  • 標準量は1日3g・3か月が最低ライン:飲み込みが弱い方はゼリータイプ・分包タイプを選択。医療スタッフと相談しながら進める
  • 長期の安全性は1年追跡でも良好:ただし持病・服薬中の方は必ず主治医に相談してから開始を
  • 全体像を俯瞰するには:効果・飲み方・副作用・選び方・属性別の使い分けを9つのテーマで総まとめした HMBとは?効果の条件と選び方を最新エビデンスと現場視点で総まとめ【保存版】 で、本記事の位置づけも見えてくる

HMBは「筋肉を増やす魔法のサプリ」ではありません。ただし、筋肉を失いつつあるご家族にとっては、食事と運動の隙間を静かに埋める心強い補助になります。どの局面で、誰に、どう使うかを見極めて、必要なタイミングにだけ手を伸ばす。それが高齢者のHMBとの正しい付き合い方です。

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参考文献

この記事の内容も、数千件のフィットネス論文を人の手で一つずつ読み解いた研究データベースに基づいています。同じデータベースを直接検索できる「FitOnline Lab」なら、あなた自身の気になるテーマも調べられます。

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