新団体Zenix(ゼニックス)とは?代表が語る誕生の経緯と今後のビジョン
2026年1月14日、日本でNPCおよびIFBBプロリーグの大会を運営してきたFWJが、ライセンス契約を更新できなかったというニュースが報じられた。NPCとIFBBプロリーグはアメリカに拠点を置き、世界最高峰のステージであるオリンピアに直結する団体だ。FWJはアマチュア大会の立ち上げから、東京プロ・ジャパンプロといったプロの活躍の場を国内に作るまで、日本ボディビル界を支えてきた。その契約終了は、関係者に「日本からプロリーグの大会が消えるのでは」という不安を広げた。そうしたなか、新団体Zenix(ゼニックス)が2026年1月17日、プロモーター・統括ディレクターの就任とともに始動した。
Zenixの代表・運営陣
プロモーターのサリー佐々木氏は、2019年からIFBB国際ジャッジとして活動してきた。国内に留まらず、ここ2〜3年では台湾・韓国・中国を含むアジアの国際大会、さらにはラスベガスのオリンピアマチュアやアーノルドクラシックといった本場アメリカの大会でもジャッジを務めている。日本国内のプロ大会では、アメリカのヘッドジャッジと並んで判定に携わってきた実績がある。
統括ディレクターの徳田氏は、4年前まで東京で消防官として勤務していた。独立してカメラ・映像を手がけるようになったタイミングでFWJの撮影チームに加わり、2024年からはプロ大会やオリンピアマチュアのプロダクションをディレクターとして率いてきた。日本でNPC・IFBBプロリーグの大会が始まった創世期から、ステージの裏で大会を支えてきた人材だ。
サリー氏は沖縄出身。高校卒業後にアメリカの大学へ渡り、20代ではオリンピアに触れ、ゴールドジムに通うなどボディビルに親しんだ。帰国した20代後半には、山岸秀匡氏のオリンピアデビューやロニー・コールマンの引退という時代に、一人でオリンピア観戦に足を運ぶほどのファンだった。日本では現在の夫・ビーフ佐々木氏や坂部氏らと出会い、当時のNPCJで女性部門の立ち上げに仲間の一員として関わる。選手としてステージに立ったことは一度もなく、当初から運営側として海外ジャッジの通訳やMCサポートを担い、そこからジャッジの道に入った。長年、平日は人事などの会社員として働きながら週末だけジャッジとしてFWJに携わっており、その二足のわらじはあまり知られていなかった。約2年前にリードエッジへ入社し、ボディビル業界にフルで関わるようになっている。徳田氏は、2022年にカメラマンとしてステージを追った際、LED演出のなかで選手がシルエットで登場するプロダクションと、一人ひとりにスポットが当たる運営姿勢に触れ、この団体の温度を感じたという。
Zenixはいつ、なぜ立ち上がったのか
立ち上げ時期をめぐっては「1年前から仕込んでいたのでは」という憶測も流れた。しかし実際に動き出したのは年明け以降であり、会場探しも年明けからである。会場は通常、1年前からの確保が常識だと関係者には繰り返し伝えられてきたため、その説明が独り歩きし、「だから1年前から準備していたに違いない」と解釈された可能性が高い。
サリー氏は、FWJ在籍中、会場費の高さやステージ制作・支払いの重さなど数々の困難を乗り越えつつも、東京プロ・ジャパンプロ・アマチュアオリンピアジャパンなど、選手が2年後・3年後・5年後を見据えて計画する大会の先行きに、漠然とした不安を抱えたまま2年を過ごしていた。その状態で組織に留まることをやめようと、1月6日頃に退職届を提出して辞任した。転職したうえで週末だけFWJを手伝う案も頭にあったが、数週間と経たないうちにFWJの契約更新断念の報に接した。やりくりが厳しくなっていたことは肌で感じていたため、驚きよりも「その日が来たか」という感慨のほうが強かったという。
ほぼ同時に、日本のIFBB参加団体のプロモーター就任の打診があった。7〜8年かけてジャッジとして磨いてきた技術と、正しい判定で日本の選手をプロへ送り出したいという誇りがあるなか、プロモーターになれば日本ではジャッジができなくなる。迷いはあった。それでも、アスリートやコーチ、業界全体が目標を失うことのほうがはるかに大きいと判断し、ビーフ氏らと相談のうえ、海外で積んできた経験をすべて新しい日本のIFBB参加団体に注ぐと決めて引き受けた。ジャパンプロでは、約1ヶ月前にオープンボディビル部門のヘッドジャッジを急遽任されるなど、契約終了を事前に知っていたわけではなく、会場手配なども年明け以降の短期間で進めている。
FWJ契約問題と大会運営の実態
FWJが契約を更新できなかった理由について、IFBBから正式に説明を受けた事実はない。支払いが影響していないとは言い切れないが、それ以外に大きな要因を想定しにくい、というのが率直な見立てだ。一方、プロモーター就任の打診時にIFBBに「なぜ自分か」を尋ねたところ、長年ジャッジとしての姿勢と努力を見て信用度が高いと評価されていたという返答があった。プロモーター選定には、資金面だけでなく信用が大きく効いている可能性がある。
大会運営の収益性については、誤解が広がりがちだ。「FWJだけが稼いでいる」という見方は事実と異なる。人件費・会場・ステージなど、かかるコストは大きく、正社員として抱えている人数は限られている。かといって、赤字で成り立たないビジネスだからZenixも同じ末路をたどる、という論にも根拠は薄い。他国でも同様の参加団体が続いている以上、やり方と資金配分を適切にすれば黒字化は可能であり、その前提でZenixは引き受けている。ただし、手を打たなければ大金が動くビジネスではなく、経営のバランスはかなりシビアだ。IFBBプロリーグ参加に伴うライセンス費用も軽くはないため、それを補填できる資金を確保したうえで回していくことが前提となる。加えて、年間のコンテスト数が多いため運営はコンテスト中心になりがちで、写真・動画販売など周辺収益の仕組みが立ち遅れている。ここを整えれば、資金の余裕を選手への演出や賞金などに還元しやすくなる。
日本は国際的に見てもリージョナル大会の開催数が突出して多い。他国ではオリンピア前などに数えるほどしかないところ、日本では選手が毎月のようにステージに立てる。背景には、フィットネスブームと日本人アスリートの高い需要があり、それに応える形で回数が積み上がってきた。契約上の縛りもあり、容易には減らせず、ここ数年は25以上の試合が続いている。
「Zenix」の名前の由来と理念
団体名の読みは「ゼニックス」。日本のイメージを残したいという思いから、IFBBにも相談しながら決めた。
「Zen」は、禅や和の精神を意識している。派手にアピールしなくても、やるべきことはきちんとやる。表向きは静かでも、内に強い熱を持つ——そうした日本人の矜持・継続力・精神力を、団体とスタッフのあり方に重ねた。「X」は、数学の未知数や、まだ定まっていない・進化・限界がないというイメージだ。競技も団体も進化し続ける。ボディビルの定義や、良いフィジークの基準・審査のあり方も、10年後・20年後には変わっていく。だから団体も進化を止めない、という意志を込めている。
ミッションには「ボディビルという競技を一つに定めない」とある。正解を一つに決めず、多様な表現と多様なボディビルの道を認める。ナチュラルとオープンのどちらかに絞るのではなく、両方の表現を大切にする方針だ。
Zenixのビジョンと選手への方針
IFBB・NPCはワールドワイドで同じカテゴリー・クラス・ジャッジ基準が通用する。それにもかかわらず、日本だけで何年も、あるいは一度も海外のステージを踏まずに終わる選手が少なくない。Zenixは、「あの大会に出たらダメ」と囲い込むのではなく、海外にもどんどん出て、さまざまな経験を積んでほしいというスタンスを取る。ポーズやルールは世界共通で、言語のハードルも比較的低い。プロになってから初めて海外に行く必要はなく、リージョナルはどこも同じ土俵なので、ノービスやマスターズでも台湾・韓国などのリージョナルにアマチュアのうちから出てよい。日本から送り出し、海外からも招く。選手を囲い込まず、自由に挑戦し、海外と国内の両方のステージを楽しむ形を目指す。
ナチュラルとオープン、ドーピングテストについては誤解が残りやすい。整理するとこうだ。道は「テストがある部門」と「テストがない部門」に分かれているが、出場資格は相互に開かれている。ナチュラルでプロカードを取った選手は東京プロなどのオープン部門に出場でき、オープンでプロカードを取った選手もナチュラルのメンズフィジークやビキニなどに出場できる。優勝時にテストがあるかどうかの違いであり、どの大会にも出られるが、テストの有無が違うという理解が正確である。
カラーリング(日焼け・タンニング)のルール見直しも進める。ジャッジ経験のなかで、厳しい減量・トレーニングの末に仕上がったのに、色の薄さや塗り方で台無しになっているケースを多く見てきた。会場との兼ね合いも踏まえ、「必ず一度流してからステージに立つ」ことを前提としない形にし、皮膚の質によっては流さないほうが色がきれいに残る場合もあるため、流さなくてもよい選択肢を今年は試す。海外には洗い流す文化がなく、海外選手はそのまま出ている。日本ルールを守るあまり色が薄くなり、不利になりがちだった日本人選手が、世界基準に近い条件で戦えるようにする狙いがある。
アジア連携とIFBBプロリーグのこれから
日本とIFBBプロリーグの関係は、Zenixになったからといって根本から変わるわけではない。FWJの時代から突き詰めてきた部分は引き継ぐ。そのうえで、国際イベントやアジアとの連携はより強める。ウーマンズワークショップに限らずメンズの取り組みも含め、日本単独で完結させるのではなく、まずは台湾・韓国・中国と手を組み、アジア全体で盛り上げる。その先にアメリカ・ヨーロッパとの接点を広げる。イベント・セミナー・大会を、他国のプロモーターとも協力して組み立てていく方針だ。
日本のフィットネス文化が世界と比べてまだ弱い部分は、主に二つある。一つはメンズフィジークに人気が集中し、クラシックフィジークやボディビルへ目が向きにくいこと。業界として健全ではなく、メンズフィジークの選手がクラシックやボディビルに憧れ・挑戦する流れを育てる必要がある。韓国と比べても、日本はここで成長が止まっている。もう一つは女子、とくにフィットモデルだ。新たな入り口として設けた部門に、日本は出遅れている。韓国や中国では、モデルやチアリーダーなど、これまでボディビルに縁がなかった層が最初から参加している。日本では、大学のチアや専門学校、ジムなどに足を運び、競技を紹介したり宣伝の協力を得たりして、これまで縁のなかった女子に届ける取り組みを強化したいとしている。
FWJへの評価と感謝
オリンピアやアーノルドに次ぐ水準のステージ演出力は、海外からも「日本のステージは楽しかった」「ミニオリンピアのようだ」と評価されてきた。選手のニーズに応え、ジャッジとしても多くの経験の場を提供してくれたのがFWJである。今の自分があるのはFWJのおかげ、と感じている選手は多い。事実、日本でメンズフィジークを中心にしたこれだけのカルチャーが根付いたのは、FWJあっての今だ。
タイラ・マニオン、スティーブ・ワインバーガー、サンディらアメリカのヘッドジャッジからは、選手のクオリティに加え、観客の熱量やチケットへの価値感がアメリカにも引けを取らないと評価され、アジアのプロモーターからも「ここまでお金を出して観に来てくれる国は少ない」と言われてきた。日本人ファンの存在が、海外から招いたジャッジや関係者が気持ちよく帰る一因になっていた。徳田氏の目には、トレーニングの先に華やかなステージがあるという価値観を日本に根付かせ、選手一人ひとりにスポットライトを当てる文化を作ってきた団体として、FWJが映っている。
2026年大会スケジュール
| 日付 | 大会名・会場 |
|---|---|
| 3/20(祝・金) | First Championship(OPEN)/千葉県教育会館(千葉) |
| 4/5(日) | Spring Star Championship(NATURAL)/千葉県教育会館(千葉) |
| 4/18(土) | Osaka Open(NATURAL)/大阪国際交流センター(大阪) |
| 5/5(祝・火) | Golden Blaze Cup(OPEN)/草加市文化会館(埼玉) |
| 5/10(日) | Kansai Open(OPEN)/神戸新聞松方ホール(兵庫) |
| 5/16(土) | Iron Rise Classic(NATURAL)/千葉県教育会館(千葉) |
| 5/31(日) | Seven Star Championship(OPEN)/千葉県教育会館(千葉) |
| 6/6(土) | Mid Japan Open(OPEN)/アイプラザ豊橋(愛知) |
| 6/13(土) | ZeniX Uplift Classic/武蔵村山市民会館(東京) |
| 6/27(土) | OPEN PRO QUALIFIER/武蔵村山市民会館(東京) |
| 6/27-28(土・日) | ZeniX Tokyo Pro/武蔵村山市民会館(東京) |
| 7/11(土) | Sunrise Classic(NATURAL)/神戸新聞松方ホール(兵庫) |
| 7/19(日) | Tokai Open(OPEN)/長岡総合会館(静岡) |
| 7/25 or 26 | Gateway Classic(NATURAL・OPEN)/(茨城) |
| 8/2(日) | ZeniX Japan Pro/市原市市民会館(千葉) |
| 8/11(祝・火) | Beef Sasaki Classic(OPEN)/市原市市民会館(千葉) |
| 8/29(土) | Ryukyu Championship(OPEN)/てだこホール(沖縄) |
| 9/5(土) | Titan Classic(NATURAL・OPEN)/千葉県教育会館(千葉) |
| 9/13(日) | Fukuoka Championship(OPEN)/黒崎ひびしんホール(福岡) |
| 10/4(日) | Fenix Open(NATURAL)/広島国際会議場(広島) |
| 10/12(祝・月) | Powerhouse Gym Japan Classic(OPEN)/市原市市民会館(千葉) |
| 10/17(土) | North Iron Spirit(NATURAL・OPEN)/白河文化交流館(福島) |
| 10/24(土) | Central West Championship(NATURAL・OPEN)/ラブリーホール(大阪) |
| 10/31-11/1(土・日) | OLYMPIA AMATEUR JAPAN(OPEN)/三郷市民会館(埼玉) |
| 11/7(土) | Muscle King Cup(NATURAL)/武蔵村山市民会館(東京) |
| 11/21(土) | Crown Classic(NATURAL)/春日部市民文化会館(埼玉) |
| 12/5(日) | Kansai Apex Classic(NATURAL)/藤井寺市民総合会館(大阪) |
| 12/19(土) | Natural Teppen Classic(NATURAL)/藤井寺市民総合会館(大阪) |
選手・ファンへのメッセージと初大会
年明けの急なニュースで、多くの選手や関係者が先の見えない状態に置かれたことへの申し訳なさが、運営側にはある。そのうえで、新団体を立ち上げ、再びステージに戻れる環境を整えている。Zenixとチーム一同で、長く安心して競技生活を送れる舞台を目指す、というメッセージが発されている。
一方、FWJで多くの経験を積んできたとはいえ、今回のスタートはゼロに等しいという認識も示されている。運営として分からないことや迷うことは、とくにこの1年は多いだろう。その実態を隠さず、オープンに発信していく方針だ。主役は選手とファンであり、トップ層だけに門戸を開くつもりはない。初めての大会だからこそZenixのブランドや価値観に触れてほしい。出場の有無にかかわらず、まずはコンテスト会場に足を運び、Zenixの世界観を確かめてもらいたい、という呼びかけがなされている。
日本でIFBBプロリーグの大会が継続し、選手とファンが安心して競技と文化を楽しめる環境を、Zenixは受け継ぎ、発展させていく役割を担う。初戦となる3月の大会が、その第一歩となる。
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この記事を書いた人
フィット
- 2014年7月 筋トレスタート(歴12年)
- 2018年5月 パーソナルトレーナースタート(歴8年)
- 2019年6月 社内で最速級の速さで店長へ就任
- 2020年4月 フリーランスパーソナルトレーナーとして独立
- 2022年7月 株式会社FITONLINE設立
- 2026年3月 FitOnline Labを開発。2,000以上のフィットネス関連論文を査読。
- 2026年7月 FitOnlineで試飲したプロテイン33ブランド・301フレーバー
- パーソナルトレーナーとして最高月収150万円達成
- 実際に飲んで試してきたサプリメント30種以上
- ANYTIME、JOYFIT、FASTGYM、ゴールドジム、FIT PLACE、東急スポーツオアシスなど計10以上の大手ジム利用経験あり
- 通算1,000名以上のお客様へカウンセリング・セッション
- お客様の最高減量幅34kg
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