ジャーマンボリュームトレーニングとは
ジャーマンボリュームトレーニングは、1970年台にドイツで始まりました。
重量挙げのコーチが、オフシーズンにアスリートの筋肉量を伸ばす目的でプログラムが作られ、別名GVTと呼ばれています。
ジャーマンボリュームトレーニングの内容としては、以下4点が基本となります。
以下のいずれかが欠如した場合、単に少し強度の落ちたトレーニングになりかねないので、必ず4点セットでジャーマンボリュームトレーニングを実施してください。
①コンパウンド種目
胸のトレーニングで言うとベンチプレス、脚のトレーニングだとスクワット、肩だとショルダープレスなど、多関節種目で複数の筋肉を同時に使う種目を選びます。
②1RMの約60%または20RMの重量
1RMの60%とは例えばベンチプレスがギリギリ100kg 1回上がるとしたら、それの60%なので60kgの重量となります。
または20回ちょうどできそうな重量を選んでいただいても大丈夫です。
理論的にはどちらで重量を探してもほとんど同じような重量になるはずです。
③10回10セット
10回10セットがジャーマンボリュームトレーニングの真骨頂となります。
普段やるトレーニングよりもかなりハイボリュームになるかと思いますが、何としても10回10セットやり切ってください!
④インターバル60〜90秒
セット間のインターバルは60〜90秒にセットします。
初めてジャーマンボリュームトレーニングをする方は、10セットやりきれない場合がありますので、最初は90秒のインターバルで組むがいいかと思います。
ジャーマンボリュームトレーニングのメリット
ジャーマンボリュームトレーニングには以下のメリットがあります。
これらを一つずつ解説していきます。
- ①トレーニングボリュームの増加
- ②フォームの安定
- ③トレーニングレベルの向上
- ④トレーニング時間の短縮
①トレーニングボリュームの増加
トレーニングボリュームとは一般的に、以下の式で表されます。
重量 × 回数 × セット数
1RM 100kgのベンチプレスをジャーマンボリュームトレーニングに当てはめて実施すると以下の計算になります。
60kg × 10回 × 10セット = 6,000ボリューム
よくありがちな1RM 80%の重量で3セット行うと、以下の計算になります。
80kg × 10回 × 3セット = 2,400ボリューム
計算式を見ても明らかですが、容易にトレーニングボリュームを稼ぐことができます。
②フォームの安定
ジャーマンボリュームトレーニングで扱う重量である1RMの60%または20RMの重さは、通常ほとんどのトレーニーにとって非常に軽く感じます。
ただ、重量が軽いことで非常にフォームが安定します。
ベンチプレスで言うと、手首が返ることもなければ、過度のブリッジを作る必要もなく、また肩を痛める心配もほとんどないでしょう。
③トレーニングレベルの向上
10回10セット、つまり同じ動きを100回することで、トレーニングレベルの向上も見込めます。
野球選手が素振りを何回もして、自分のバッティングフォームを確立するように、トレーニングでも自分の身体にフォームを覚えさせてあげるのです。
ジャーマンボリュームトレーニングは扱いやすい重量とそれに伴うフォームの安定、トレーニングボリュームの多さから、トレーニングレベルの向上が見込めるのです。
④トレーニング時間の短縮
日々忙しくされてジムにそこまで時間の割けない人には、時間の短縮になります。
10rep行うのに30秒ほどだとして、インターバルが60秒。
10セット行うのに、合計しても840秒=14分
最初のセットや準備などを入れても20-25分ほどでハイボリュームな1種目を終えられることになります。
その後に補助種目を1,2種目追加しても、40分ほどでトレーニングは終わります。
ジャーマンボリュームセットはセット数の多さから一見時間がかかりそうに思えますが、徹底したインターバル管理の観点から、トレーニング時間の短縮になるのです。
ジャーマンボリュームトレーニングのデメリット
ジャーマンボリュームボリュームには以下のデメリットもあります。
- ①重量設定が難しい
- ②5セットと比較しても筋肥大は変わらない?
①重量設定が難しい
ジャーマンボリュームトレーニングでは1RMの60%または20RMの重量を基本とします。
これらの重量を設定するためには、ご自身の1RMまたは20回ギリギリできる重量をあらかじめ知っておく必要があります。
またこれらの重量を分かっていたとしても、実際にやってみると最初は5,6セットで10回できなくなることもしばしあるのです。
ジャーマンボリュームセットは基本的に途中で重量を変えたりはしませんので、一番最初の重量セットがとても重要なのです。
これは何週間か実施して各種目のデータを取ることや慣れが必要になってきます。
②5セットと比較しても筋肥大は変わらない?
実は5セットと10セットを比較しても筋肥大の有効性は証明されなかったという研究結果もあります。
オーストラリアのシドニー大学で行われた実験で、19〜24歳の健康的な19名を対象にジャーマンボリュームトレーニングである10セット法と5セットを週に3回、6週間に渡って実施して、筋肥大と筋力に及ぼす影響を調査しました。
その結果が以下となります。
The primary finding from this study was that despite a larger training volume, the 10-SET group did not achieve greater increases in muscular hypertrophy than the 5-SET group, therefore our hypothesis was not supported.
引用:Amirthalingam, Theban; Mavros, Yorgi; Wilson, Guy C.; Clarke, Jillian L.; Mitchell, Lachlan; Hackett, Daniel A. Effects of a Modified German Volume Training Program on Muscular Hypertrophy and Strength, Journal of Strength and Conditioning Research: November 2017 - Volume 31 - Issue 11 - p 3109-3119 doi: 10.1519/JSC.0000000000001747
Effects of a Modified German Volume Training Program on Muscular Hypertrophy and Strength
要約すると、「10セット法であるジャーマンボリュームトレーニングは、トレーニングボリュームが多いのにも関わらず、5セット法のグループよりも筋肥大の大きな増加は見込まれなかった。従って、我々の仮説は支持されなかった。」とあります。
ただこの研究では、6週間という短期的な考察に過ぎないこと、ベンチプレスの他スクワットとデットリフトの代わりにレッグプレスとラットプルダウンが種目として使われたこと、被験者の少なさなどを考慮すると、まだまだ考察の余地はありそうです。
ジャーマンボリュームトレーニングの方法
ジャーマンボリュームトレーニングの簡単な例を挙げます。
こちらでは、10セット10回法は1日に2回までとして、10セット1回法をする種目は基本的に多関節種目(コンパウンド種目)を採用しました。
分割方法や種目の選択、ルーティンなどはそれぞれの目的・目標に合わせて改良していただければと思います。
1日目:胸・背中
2日目:脚・腹筋
3日目:オフ
4日目:肩・腕
5日目:オフ
6日目:最初からやり直す
1日目:胸・背中
ベンチプレス(胸のメイン種目)
10回10セット
ベントオーバーローイング(背中のメイン種目)
10回10セット
インクラインダンベルフライ(胸の補助種目)
10回4セット
ラットプルダウン(背中の補助種目)
10回4セット
2日目:脚・腹筋
スクワット(脚のメイン種目)
10回10セット
レッグカール(脚の補助種目)
10回3セット
レッグエクステンション(脚の補助種目)
10回3セット
クランチ(腹筋)
10回4セット
4日目:腕・肩
ナローベンチプレス(上腕三頭筋のメイン種目)
10回10セット
バーベルカール(上腕二頭筋のメイン種目)
10回10セット
ショルダープレス(肩)
10回3セット
サイドレイズ(肩)
10回3セット
リアレイズ(肩)
10回3セット
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ジャーマンボリュームトレーニングはメリットもあればデメリットもあります。
5セットと比較しても筋肥大は変わらない論文などもあり、ネガティブに感じるかもしれませんが、私の意見としては使い方次第だと思います。
あまりジャーマンボリュームトレーニングをやったことのある人は多くないと思いますが、何といっても猛烈に効きが良いトレーニングです。
例えばベンチプレスの重量が停滞しているときや最近のトレーニングルーティンでマンネリしている時などこのジャーマンボリュームトレーニングを4-6週間ほど入れてみるのは悪くないと思います。
Youtuberであるサイヤマングレートさんが少し変わった15回10セットのジャーマンボリュームトレーニングにチャレンジしているのでぜひチェックしてみてください。
とんでもなく辛そうです(笑)