エキセントリック収縮とは?筋肥大・パフォーマンス向上のカギになる「伸ばす力」を解説

エキセントリック収縮とは?筋肥大・パフォーマンス向上のカギになる「伸ばす力」を解説

筋トレで「下ろす局面」を意識したことはありますか?ダンベルをゆっくり下ろす、スクワットでしゃがむとき――その「筋肉が伸びながら力を発揮する」動きがエキセントリック収縮です。Roig et al.(2009)の研究では筋肥大・筋力向上に有効であることが、Douglas et al.(2013)の論文では腱症の治療やリハビリへの活用がまとめられています。本記事では定義から効果、実践のコツまで、こうした知見を交えて解説します。

エキセントリック収縮とは?

筋肉の収縮の3つのタイプ

筋肉の収縮には、主に3つのタイプがあります。

  • コンセントリック収縮(短縮性):力を出しながら筋肉が短くなる動き。例:ダンベルを持ち上げる、立ち上がる。
  • エキセントリック収縮(伸張性):力を出しながら筋肉が伸びる動き。例:ダンベルをゆっくり下ろす、しゃがむ。
  • アイソメトリック収縮(等尺性):力を出しているが筋肉の長さはほぼ変わらない。例:壁を押す、プランク。

エキセントリックでは、負荷が筋肉の出す力より大きいため「伸ばされながらブレーキをかける」ような局面になります。Hedayatpour & Falla(2015)の論文では、この「伸張+過負荷」の組み合わせが筋成長や神経適応を促す有効な刺激になると述べられています。

コンセントリック・エクセントリック・イソメトリックの比較

日常・スポーツでの例

日常生活やスポーツでは、エキセントリックは頻繁に起こっています。階段を下りる、着地で膝を曲げて衝撃を吸収する、走っていて減速・ブレーキをかける場面などです。トレーニングでは「上げる」より「下ろす」局面を意識することが、エキセントリックを活かす第一歩です。

エキセントリック収縮の特徴とメカニズム

大きな力を出せる

エキセントリック収縮では、同じ筋長でコンセントリックや等尺性収縮よりも大きな力を発揮できることが知られています。Franchi et al.(2017)によれば、エキセントリックは大きな力・仕事量を出しつつ、酸素消費や代謝コストは低く、エネルギー効率が高いという特徴があります。そのため、高負荷をかけながらも代謝的負担を抑えたいリハビリや、腱症の治療にも適しているとHedayatpour & Falla(2015)の論文では述べられています。

筋肥大・筋力アップとの関係

Roig et al.(2009)のメタ分析では、コンセントリックより高強度で行ったエキセントリックトレーニングで、筋力(とくにエキセントリック筋力)と筋囲の増加がより大きくなっていました。筋肥大の優位性は「エキセントリック時に発揮されるより高い負荷」に起因する可能性が示唆されています。一方、da Silva et al.(2025)のメタ分析では、ECCとCONで筋肥大に統計的な差はないとする結果も出ており、現時点ではどちらも筋肥大に有効で、両方取り入れる意義が支持されています。伸張と過負荷による筋の微細損傷や、タンパク質合成を促すシグナル経路の活性化が、適応のメカニズムとしてFranchi et al.(2017)やHedayatpour & Falla(2015)の論文では考えられています。

遅発性筋肉痛(DOMS)との関係

エキセントリック運動は遅発性筋肉痛(DOMS)を起こしやすいことが報告されています。Peake et al.(2013)の研究では、エキセントリック運動に伴うDOMSと筋損傷・炎症マーカーの変化がまとめられており、伸張性収縮によって筋線維や細胞膜にダメージが生じ、その後の炎症反応が痛みやこわばりにつながると考えられています。慣れていない種目や強度で行うと特に出やすいため、最初は負荷や量を控えめにし、段階的に上げていくことがおすすめです。

エキセントリックトレーニングの効果

エキセントリックを意識したトレーニングには、以下のような効果が期待できます。

  • 筋肥大の促進:Roig et al.(2009)の研究では高強度のエキセントリックが筋囲・筋厚の増加に有効であることが報告され、da Silva et al.(2025)のメタ分析では上肢や短期間の介入でエキセントリックが有利とするサブグループ解析もあります。伸張と過負荷による機械的刺激が筋肥大のシグナルを促すと、Hedayatpour & Falla(2015)の論文では考えられています。
  • 筋力・パフォーマンスの向上:エキセントリックトレーニングはエキセントリック筋力の向上に特に有効で、収縮様式に特異的な適応が起きることがRoig et al.(2009)のメタ分析で示されています。神経適応(大脳皮質の活動変化や運動単位の動員など)も関与しているとHedayatpour & Falla(2015)の論文では述べられています。
  • 腱・結合組織の強化(怪我予防):Douglas et al.(2013)の論文では、エキセントリックトレーニングが腱症(tendinopathy)の治療に有効であるとまとめられています。アキレス腱が最初に研究され、その後膝蓋腱、肘(外側上顆)、肩(腱板)などでも効果が示されています。痛みや圧痛、張力への耐性低下がある場合でも、段階的なエキセントリックプログラムが処方の枠組みとして用いられています。
  • 回復・リハビリでの活用:エキセントリックは「大きな力を出せるが代謝コストは低い」ため、腱症・筋挫傷・ACL術後などのリハビリにも活用されているとHedayatpour & Falla(2015)の論文では述べられています。負荷をコントロールしやすい種目から始めることで、安全に筋・腱への刺激を入れられます。

実践編|エキセントリックを意識したトレーニング

基本の考え方

エキセントリックを活かすコツは、「下ろす・伸ばす」局面をゆっくりコントロールすることです。目安として、下ろす局面に2〜4秒かけると、筋への負荷時間が長くなり刺激が得られやすくなります。重さを追い求めるより、コントロールできる範囲の負荷で、フォームを崩さずに下ろすことを優先しましょう。慣れていないうちは、同じ種目でもコンセントリックよりエキセントリックのほうが筋損傷や痛みが出やすいとHedayatpour & Falla(2015)の論文では述べられているため、量と強度は控えめから始めてください。

エキセントリック重視メニューの例

通常のレップ(上げ下ろし)に加えて、「下ろすだけ」のレップを組み合わせる方法があります。例:ベンチプレスで8レップしたあと、補助してもらい上げて、自分でゆっくり下ろすだけを2〜3回追加する。こうした「アクセント・エキセントリック」は、エキセントリックの負荷を強めつつ、コンセントリックの限界でセットを終えずに済みます。高負荷に慣れてから取り入れると安全です。

種目例

ここでは、エキセントリックを意識しやすい主な種目と、それぞれのポイントをまとめます。下ろす・伸ばす局面に2〜4秒かけることから始めてみてください。

  • スクワット(大腿四頭筋・臀筋・ハムストリング)
    立ち上がるよりしゃがむ局面をゆっくりコントロールします。3〜4秒かけて膝を曲げ、お尻を後ろに引くように下ろしましょう。膝がつま先より前に出すぎないよう注意。バーベルだけでなく、ゴブレットスクワットでも「しゃがむ」を意識しやすく、初心者にもおすすめです。
  • ベンチプレス・プッシュアップ(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋)
    バーや体を下ろす局面を2〜4秒で行います。胸に近づけるまでゆっくり下ろし、胸郭や肩甲骨をやや寄せたままコントロール。プッシュアップは膝つきや台に手をつく傾斜で負荷を調節でき、自宅でも取り入れやすい種目です。
  • レッグカール・ノルディックハムストリング(ハムストリング)
    膝を伸ばしながら体を前傾させる、つまりハムストリングが伸びる局面がエキセントリックです。ノルディックは強度が高いため、最初はマシンレッグカールで「下ろす」をゆっくり行うと取り組みやすく、腱・ハムの強化や怪我予防にも有効です。
  • カーフレイズ(腓腹筋・ヒラメ筋・アキレス腱)
    つま先立ちからかかとをゆっくり下ろす局面を3〜4秒で。段差やステップを使うと可動域を大きくできます。Douglas et al.(2013)の論文でまとめられているように、アキレス腱症のリハビリでも用いられる動きです。
  • デッドリフト・ルーマニアンデッドリフト(ハムストリング・臀筋・脊柱起立筋)
    バーを下ろす、あるいは上体を起こしたあと前傾してバーを下ろす局面をゆっくり行います。腰を反らせすぎず、胸を張って背中を平らに保つのがコツ。ルーマニアンデッドリフトはハムの伸張が大きいため、エキセントリックの刺激を強く感じやすい種目です。
  • チンニング・ラットプルダウン(広背筋・上腕二頭筋)
    体を下ろす、またはバーを戻す局面を2〜4秒でコントロールします。肩をすくめず、背中で引く意識でゆっくり下ろすと、広背筋へのエキセントリック負荷が高まります。チンニングが難しい場合は、ラットプルダウンで「戻す」をゆっくり行うことから始めてもよいでしょう。
  • インクラインダンベルカール(上腕二頭筋)
    ベンチを斜めに設定し、ダンベルを下ろす局面を2〜4秒で行います。インクラインだと腕が体より後方に下がるため、上腕二頭筋のストレッチが強く、エキセントリックを意識しやすい種目です。肘の位置をあまり動かさず、ダンベルだけをゆっくり下ろすと効かせやすくなります。
  • ダンベルフレンチプレス(上腕三頭筋)
    仰向けでダンベルを頭上に持ち、肘を曲げてダンベルを頭や耳の横へ下ろす局面がエキセントリックです。2〜4秒かけてゆっくり下ろし、肘の向きを固定したままコントロール。ライイング(寝た状態)で行うタイプは軌道が安定しており、三頭筋の伸張を感じながらエキセントリックを効かせやすいです。
  • マシンショルダープレス(三角筋・上腕三頭筋)
    バーやハンドルを下ろす局面を2〜4秒でコントロールします。マシンは軌道が固定されているため、バランスを気にせずエキセントリックに集中しやすく、初心者でも取り組みやすい種目です。肩をすくめず、背中をシートに軽く押し付けたままゆっくり下ろすと、三角筋に負荷が入りやすくなります。

注意点とよくある質問

やりすぎに注意

エキセントリックは筋損傷やDOMSを起こしやすいとHedayatpour & Falla(2015)やPeake et al.(2013)の研究で報告されているため、同じ部位の連日トレーニングは避け、回復日を設けることが大切です。Hedayatpour & Falla(2015)の論文では、エキセントリックには筋の微細損傷・痛み・筋力低下といった初期のデメリットもあるとしつつ、長期では筋肥大や神経適応といったメリットが得られると述べられています。最初は週1〜2回、1種目あたりのセット数も少なめから始め、筋肉痛や疲労の程度を見ながら強度・量を上げていきましょう。

よくある質問(FAQ)

「コンセントリックだけではダメ?」
da Silva et al.(2025)のメタ分析では、筋肥大についてはECCとCONで大きな差がないとする結果もあり、どちらも有効です。ただしエキセントリック筋力の向上や、腱症の治療・リハビリにはエキセントリックが特に有用という報告がRoig et al.(2009)やDouglas et al.(2013)でなされています。両方取り入れることで、筋力の様式特異性や実動作(着地・減速)への転移も期待できます。

「毎日やってもいい?」
エキセントリックは筋損傷が起きやすいため、同じ筋群は週2〜3回までにし、その間は休息または別部位のトレーニングに充てるのが無難です。部位をローテーションすれば、毎日どこかをエキセントリック重視で鍛えることは可能です。

「初心者向け?」
負荷とスピードを控え、フォームを優先すれば初心者でも取り入れられます。まずは「下ろすときに2秒数える」程度から始め、慣れてからゆっくりめの4秒や、下ろすだけレップを追加する方法がおすすめです。

まとめ

エキセントリック収縮は、筋肉が伸びながら力を発揮する局面で、筋トレの「下ろす」フェーズに当たります。Roig et al.(2009)やda Silva et al.(2025)の研究では筋肥大・筋力向上の両方に有効であることが、Douglas et al.(2013)やHedayatpour & Falla(2015)の論文では腱症の治療やリハビリへの活用がまとめられています。DOMSが出やすいため量と強度の調節は必要ですが、次の3点を意識すると効果的です。

  • 「下ろす局面」を意識し、コンセントリックと同じくらい大切に扱う
  • 下ろすときに2〜4秒かけて、ゆっくりコントロールする
  • 今日のトレーニングから、1種目だけでも「下ろす」を意識してみる

まずはいつもの種目で「下ろす」をゆっくりすることから始めて、エキセントリックの効果を実感してみてください。

参考文献

  1. Roig M, et al. The effects of eccentric versus concentric resistance training on muscle strength and mass in healthy adults: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2009.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18981046/
  2. da Silva LSL, et al. Comparison between eccentric vs. concentric muscle actions on hypertrophy: a systematic review and meta-analysis. J Strength Cond Res. 2025.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39652733/
  3. Douglas J, et al. Eccentric training for the treatment of tendinopathies. Curr Sports Med Rep. 2013.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23669088/
  4. Franchi MV, et al. Skeletal Muscle Remodeling in Response to Eccentric vs. Concentric Loading: Morphological, Molecular, and Metabolic Adaptations. Front Physiol. 2017.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5495834/
  5. Hedayatpour N, Falla D. Physiological and Neural Adaptations to Eccentric Exercise: Mechanisms and Considerations for Training. Biomed Res Int. 2015.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4620252/
  6. Peake JM, et al. Eccentric exercise-induced delayed-onset muscle soreness and changes in markers of muscle damage and inflammation. Appl Physiol Nutr Metab. 2013.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23977721/

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